読譜と聴音の狭間で

わたしは読譜が出来る。
あんたピアノの先生なんだから当たり前だろうが!
そうです。当たり前なんですけれど、わたしは読譜なんざさほどの特技、技能でもなく楽譜をしつこく見てりゃある時、なんとなく、またはある時突如鮮明に解読してゆけるものさ。

と、タカをくくっていた。
なぜか?それはわたしがそうだったからだ。

音楽科の高校に入学したときだって、ここにいる高校生たちは全員音符玉オタマジャクシ追いの名人なのであろう。
更に言えば、わたし如きより、、。

確か隣の席に座る少女に「あなた譜読みが早いみたいね。わたしは読譜苦手で新しい曲もらうと譜読みするのにとても時間かかるのよ。」
とお褒めにあずかったときも、そりゃまぁ、初見の苦手な人だっているだろう。って、そんな言葉はスルーしてた。

その時期はここに書き切れないほどの克服すべき事象を抱えていたので自分の譜読み能力についての査定なんざ2の次3の次、優先順位からしたら100番目くらいにしか相当してなかった。

わたしは譜読みは早いし、楽譜の観念の理解も苦労しなかったし、当たり前にブラインドタッチは出来てた。

だが、困ったことに暗譜が出来ない。(今は出来ます。今でも苦手ですが。)音感なくて聴音の成績が惨憺たる有様。
もうこれだけで、ドカーンと落ち込む原因と結果には事欠かず、落ち込んだからってウツウツとした日々を過ごせば事態はよけい悪化することは目に見えていたので、泣きたい日々過ごし、実際に泣きつつもなんとか解決を図ろうと必死になった。

聴音については聴音なんざ1回聴けばたちどころに採譜してしまう少女になんで出来るのよ?
と、お伺いたてましたよ。

後から思えば、音感があって採譜が好きな人にはそもそもなんでわからないかわからないのだろうけれど、「慣れよ。」
とのこと、中学からここの学校にいて聴音の問題をさんざやったから慣れりゃ出来る。

これはある意味、真実。
その惨憺たる成績の聴音もわたしは高校を卒業する頃には平常成績まで上り詰めた。




その後、講師となって「幼少の生徒には音感訓練をいたしましょう。学齢期前というのは音感が身につくとても良い時期です。」
というポリシーの講習会を幾たびも受け。

これも半分くらいは当たり、幼少期適正な音感の訓練受けてりゃ14歳であんなに苦労することは無かったでしょう。
でも半分はハズレ、音感もいい人は訓練しなくてもいいのです。

だが、講師としての実践を積むと音感より何よりいつまでも譜読みの観念がわからない。及び曖昧。
な生徒に多々遭遇。そして「音感なんかより、譜読みのほうをなんとかしなきゃ。何のためにピアノ習いに来てるのよ。」
の意見(講師から)。

いや、聴いただけ弾けてしまうのはうらやましいし、暗譜が早いのもうらやましい。

だが、そうも言ってられない。というのは、すべてのピアノ曲を聴いて弾くのは不可能だ。
さらに、楽譜をあまり見ないで弾くというのはブラインドタッチが出来てない。出来ないと、目で音符玉を追いながら弾けないので間違いだらけでそれをいつまでもなおせない。

更に楽譜から作曲者の意図を読み取る。という作業がろくに見てないもの出来ないじゃないか!

そうか!それは困る。いつまでも先生が一緒に譜読みしてやるわけにもいかないねー。

つまりわたしと逆で、音感があって暗譜が早くだいたい聴いて弾けてしまうけどいつまでも読譜が出来ない。
タイプ。

大手から独り立ちして音楽教室主宰して読譜の観念をお勉強させるためにその名もセオリー、つまり理論をコミで学習させているが、何故か直感的に読譜が出来てしまう少年少女もいるが、譜表の観念がいつまでも怪しい。という子供もいる。(大人もだけど)

4分の4拍子、つまりは1小節に4分音符が4つ入る。が、理論としてはとにかく、聴音すると字余り、音符が足りない。が平気。

あるいはいつまでもドレミのフリガナをつけたがる。

わたしは今は初心者でも大譜表を使った聴音をやってるが、これはもちろん最初は音感のため。と信じていた。
だが、徐々にこれ読譜の訓練に最適なんじゃないか?と気づく。

文字だって書いて覚えるように音符だって実際に書いてみるのは、いい読譜の学習と信じている。
そもそも、幼少期には音感の訓練を!
と、いうのもなんだか平成の世になった頃からむなしくなった。

シャカリキにドレミファソーラファミッ、レッ、ドッ♩やらなくてもみんな音感いいのです。

それでは聴音のお稽古で読譜の苦手はバッチリ解消。
になるかというと、これまた、いい対処法にはなるけれど決定的ではない。

リトミックを取り入れたレッスンしてる先生がだいたい読譜は理系脳と連動していて、算数の得意な子は譜読みが上手だ。
と、話してくれたけれど、かといって算数の勉強に励めば読譜が上手になる。ってわけでもないと思うし、これの対処法はまずは1番は本人が読譜の苦手を克服しよう。

という気になってくれること、譜表の意味を理解しようと努力して、出来るだけフリガナをふらずに読むようにする。

そして、ここが大事なのは自分は譜読みに時間を要するタイプなので譜読み時間の調整を最初に考える。こと。
わたしはその逆で、暗譜に要する時間を多くとるように調整いたします。

ここで、わたしのところにくれば読譜が苦手なんてたちまち解決して差し上げますわ!
と、言えればいいんだけれど。残念!